屯所に着いたら、総司が出てきた。


俺は血だらけの天鬼を見せるわけにはいかないと思い…近藤さんに、総司のことを頼んだ。


微かに聞こえた、争うそうな総司の声。


「なんで翼鬼に会わせてくれないんですか!?」


「いや、だから…翼鬼君はその…治療が必要だから、今日は山崎君のところで…」


「会わせてください!お願いです!!」


…会わせることができるのなら、俺だって会わせてやりてぇよ。


けど…。


俺は原田の腕で目を閉じている翼鬼を見る。


━━「土方さん。もし俺が血まみれで倒れちゃったら…絶対に総司に会わせないでね?心配かけたくないし…それに、血まみれで会うのなんて、嫌だから」━━


━━「はぁ?お前何言ってんだよ。総司はお前に会いたがるに決まってんだろうが」━━


━━「…だって…好きな人に血まみれの姿なんて、見せたくないでしょ?」━━


翼鬼はそう言って笑った。


そんな言葉と笑顔を見たら、半信半疑でも分かったと頷くしかなかった。


その時は、思いもしてなかった。


翼鬼が…本当に血まみれになるなんて。


「……行くぞ」


俺は原田と山崎に先を急がせた。


未だ近藤さんに言い掛かっている総司の声を、聞きたくなくて。


俺は誰にも聞かれないように。


見つからないように。


「……………ちくしょう……」


無意識のうちに、そう呟いて。


拳を握りしめていた…。


その声を、果たして天鬼は聞いていたのだろうか…。


夜の綺麗な月だけが、俺の悔しさを知っている。