天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

天鬼の次の言葉を待つ。


「……いいんだよ、通常よりも遅いだけで、治るんだから…」


「治るからいいとか、そういう問題じゃねぇよ!!」


「じゃあ!じゃあ…怪我を移さずに、ただ誰かが死ぬのを見てろって!?」


天鬼の必死な顔と声に、俺は反論できなかった。


たぶん…普段とは違う天鬼の一面に…俺は呑まれていたんだ。


「誰かが死ぬのを黙って見てろっていうんなら、確実に治る僕たちに移したほうがいいじゃん!!」


はぁはぁと息も切れ切れに話す天鬼。


「なんで…分かってくれないんだよ!翼鬼も僕も、自分たちの意志でやってんだ!誠を貫くためにやってんだ!じゃねぇと…ほんとに鬼になっちまうんだよ!!」


…いつもの、ふざけてる天鬼じゃない。


口調まで変わっている。


「…土方さん。信じてやるのも、親の役目じゃねぇのか?」


「新八…誰が親だ」


「まぁまぁ…」


ったく…どいつもこいつも、一筋縄ではいかねぇのな。


「土方さん…僕ね。土方さんがお父さんだったらいいなって…本気で思ってる」


「はぁ?お前まで何言い出すんだよ…」


冗談だろうと思った。


でも、天鬼の表情は真剣で。


俺は…


「あーもー!わーったよ!ただし!…死ぬんじゃねぇぞ!?」


すると天鬼は…ぱぁっと輝いた顔をした。


「ありがとう、お父さんっ!」


「お前……」


少々呆れもしたが、こいつらになら…お父さんと呼ばれるのも悪くはねぇ…か?