天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

「っ、おいっ!!原田!」


俺は翼鬼の近くにいた原田に、翼鬼を支えろというつもりで名前を呼んだ。


「ああ。…っと…」


「翼鬼!?」


原田はちゃんと受け止めてくれたが…平助は何が起こったか分からないように、翼鬼を呼ぶ。


みんなはただ呆然と、傷を負って気を失った翼鬼を見ていた。


「なん…で…?」


「翼鬼…なんでだよ…」


数人の隊士が、呟く。


「…お前らの為だろうが…。お前らを助けたいと思って、だから翼鬼は…」


そこまで言えば、全て分かったのだろう。


隊士たちは震えながら、翼鬼に礼を言った。


…そこで俺は、あることに気がついた。


「なんで…傷が治らねえんだ?」


普通なら、もう治癒が始まっていてもおかしくないと思う。


不思議に思って、天鬼に聞く。


「……自分がした怪我は、すぐに治る。痛みと引き換えに。だけど…」


天鬼は渋い顔をして続ける。


「…人の怪我を移した場合は……通常よりも治りが遅くて…」


そこまで聞いた瞬間。


━━パンッ…。


俺は思わず、天鬼の頬を平手で殴っていた。


「なんでそういう大事なことを先に言わねぇんだっ!!!!」


「っ…」


天鬼は俺が殴った頬を押さえながら、またも泣きそうな表情をして、俺を見る。


「だっ…て…。言ってたらどうせ止めたんでしょ!?」


「当たり前だろうが!!」


「ちょっ…土方さん!」


「その辺にしてやってください」


平助と斎藤が俺を止めに入る。


俺ははっとして、天鬼の胸ぐらを掴みそうだった手を下ろした。