天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

「天鬼」


俯いていた顔をあげると、そこには土方さんがいた。


「何…?」


「…危ないと思ったら、翼鬼連れて逃げろ。お前は絶対に人を斬っちゃなんねえ」


いつになく、真剣な顔で言われた。


そんなに心配してもらわなくても、大丈夫なんだけどな…。


「それは約束できないかな?僕だって…翼鬼を、みんなを守りたいんだ」


「お前はこの時代の人間じゃねぇ。こんな重みを、背負う必要はない」


「でも、翼鬼は背負った。…土方さんが言おうとしてくれてること、分かるよ。だけど、僕だってもうこの時代の人間じゃないの?」


生まれたのは、平成。


でも、今いるのは江戸の幕末。


だったら、その場に対応して生きるしかないじゃんか。


土方さんは…僕たちのこと、やっぱり足手まといって思ってるのかな…。


「…この時代に生まれてたら、俺はお前たちに容赦なく人を斬れって言ってただろうな」


いきなり、何を話し始めるんだ。


「それがここでの生き方だからだ。お前たちのことを、足手まといなんて思っちゃいねえ。覚悟があることも分かってる。だがな…」


そこで一度言葉をきって、土方さんは続ける。


「俺たちが、お前たちにこんな重みを背負わせたくねえんだよ。…もう、いいんだ」


土方さんは、どこか切なそうに微笑んだ。


…重みを背負うのは、自分たちだけで十分だと思っているのだろうか。


そういうとこは、翼鬼も一緒だ。


僕だけがいつも守られてる。


…僕だって、変わるよ。


人を斬らずにすむような、強い人になる。


もう二度と…翼鬼に辛い思いはさせない。