天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

「くそっ、早く出ていけ!!」


言われなくとも、出て行くさ。


お前なんかの側にいたくない。


そう思って、あたしは部屋を飛び出た。


「どないした!?」


ちょうどそこに、山崎さんがいた。


「…終わったよ」


あたしは額を見られないように、髪をぐちゃぐちゃにしながら、そう言った。


「何やっとんや!?もう一人だけ、指名が入っとるのに…」


指名?


終わったんじゃないの?


「誰が…指名なんか」


「行ったらわかる。…ほら、髪やり直すで」


「……嫌だ」


「は?ほんまにどないした。何かあったんか?」


…言ってしまいたい。


けど言えない。


甘えて、しまいそうだから。


甘えたら…あたしは弱くなる。


今みたいに、すぐに傷ついてしまう。


「…無理にとは言わん。ただ、髪だけはやってもらう」


「……分かった」


仕方ないから、髪だけ整えてもらった。


そして、案内された部屋に向かう。


その前に、やつらがやろうとしていることは全て伝えた。


あたしは今…指名が入った部屋の前で立ち往生してる。


入りたく、ない…。


そう思うけど、勇気を振り絞って、障子に震える手を伸ばす。


そっと、障子を開けた…。