天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

「…もっと、甘えてくださいよ…」


思わず、呟いてしまった。


「え…?」


天鬼君は目を丸くして、こっちを向いた。


そして泣きそうな顔で笑って、


「何言ってるの?甘えるなんて…わがまますぎるよ。ただでさえ、よくしてもらってるのに…」


と言った。


どうして、そんなことを思うの?


わがままなんて、誰が言った?


「わがままなんかじゃないよ。頼ってくれたほうが、嬉しい…」


きっと、みんな思ってる。


溜め込んで壊れてしまうよりも、甘えて、ちょっとわがままなほうが…どれだけいいか。


「…寝て、ないんだよね?」


ピクッと、肩が動いた。


土方さんに、聞いていた。


寝ているふりをしてるだけで、ほとんど寝ていないと。


翼鬼が心配すぎて、眠れないんだろう。


「…僕にとって大切なのは、翼鬼だけだった。翼鬼がいれば他はどうなろうと、正直どうでも良かった。翼鬼の為ならなんだってできた。…人殺しでさえ」


だって、と天鬼君は続ける。


「翼鬼は誰より優しいんだよ?敵にさえ、死んでほしくないと願う。あんなに酷い仕打ちをしてきた親だって…殺したいとは思ってた。でも、ほんとはっ…」


俺には顔を伏せてしまった天鬼君が、小さい不器用な子供に見えた。


「ほんとは、殺したくないって思ってた!そんなに優しい翼鬼が、どうして嫌われなきゃなんないの?この世は、理不尽すぎるよ…!」


…それは、分かるよ。


天鬼君みたいに、ずっと一緒に翼鬼といたわけじゃない。


会ったのは、つい最近と言っていいくらい。


でも、翼鬼が優しくて、暖かいってことくらい。


俺たちにだって、分かるよ…。