天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

「…土方さん。入りますよ」


「遅かったじゃねぇか。どうせまた甘味処にでも行ってたんだ…ろ…」


部屋に入った俺を見て…正確には翼鬼を見て、土方さんは目を丸くした。


「…お前ら、いつからそんな関係に…?」


「違います。…浪士が襲ってきて、俺が相手してたんですが…。天鬼君が斬られそうになったところを…庇って…」


「…斬ったのか」
 

俺は頷く。


「そうか…。でも返り血がついてねぇぞ?」


確かに、一滴も血がついていない。


「急所を一撃で、やってました。おそらく、返り血がかからないほど速かったのでしょう」


…あの動き。


初めてじゃなかった。


やったことがあるような、慣れているような、そんな感じ。


何故だろう…?


「翼鬼…大丈夫?」


天鬼君が、入ってきた。


「…気を失ってる」


「翼鬼っ…」


今にも泣き出しそうな顔で、天鬼君は翼鬼の名前を呼んだ。


もちろん、反応はない。


「翼鬼…翼鬼…。…ありがとうっ…助けて、くれて…」


天鬼君…。


お姉ちゃんのこと、本当に大好きなんだね?


「僕…強く、なるからね。今度こそ、お姉ちゃんを守るからっ…」


そのまま天鬼君は、へなへなとしゃがみこんでしまった。


俺は、翼鬼を天鬼君の前に下ろした。


「お姉ちゃんっ…」


翼鬼を抱きしめる、天鬼君。


その肩は、微かに震えていた…。