天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

「…帰ろう。天鬼君は、お千代さんを送っていってください。もう、大丈夫ですから。念のため、隊服は俺が持って帰ります」


はやく、翼鬼ちゃんを帰さなければ。


今にも壊れてしまいそうな顔をしている。


それを気づかれまいと、必死に自分を保とうとしている。


「…分かった。…行こう、お千代ちゃん」


「はい…。…翼鬼はん、守ってくれて、ありがとう…」


その言葉に、翼鬼ちゃんは大きく震えた。


そのまま…天鬼君たちが歩いていった方向を見つめている。


「…帰ろう」


俺は動こうとしない翼鬼ちゃんの手を引っ張って、歩き出した。


そのまま、屯所近くまで帰る。


でも、屯所には入らずに、人目のつかないところに翼鬼ちゃんを連れてきた。


「おきた…さん?」


うまくしゃべれてない。


…初めて人を斬ったんだ。


当たり前だろう。


「かえら…ない、の?…あたしなら、だいじょうぶだよ…?」


必死に震えを隠そうとする翼鬼ちゃんが愛しくて…


俺は感情が促すままに、翼鬼ちゃんを抱きしめた。


「…なんで、泣かないの?泣いていいんだよ」


それでも、翼鬼ちゃんは泣こうとしない。


「…ないたらね…たちなおれない、きがするの…。あたしは…よわい、から」


…俺でさえ、初めて人を斬ったときは怖くて眠れなかった。


なのに、翼鬼ちゃんは。


自分一人でどうにかしようとしている。


…できる問題じゃ、ないだろうに。