「そうじゃねえの? 笑ってんじゃねえよ!」


 俺はちょっとムッとした。こっちが深刻な話をしてるのに、笑ってる場合かよ?

 もしヤクザに掴まったら、俺の命はどうなる事か……


「ごめん。そんなに怒らないでよ。あっち系かどうかは知らないけど、今頃怒ってるのは確かね」


 ねこは眉を下げ、申し訳ないという顔をした。


「別に怒っちゃいないけどさ……」


「ねえ、神谷さん」


「ん?」


「そんな“ヤバい人”から追われてる私を、なんで匿(かくま)ってくれるの?」


「そりゃあ、これも何かの縁だと思うし、おまえ、他に行くとこないんだろ?」


「確かにそうだけど、ほんとにいいの? もし見つかったら、かなり面倒な事になるよ?」


 そう言いながら、ねこはグッと顔を俺に近付けて来た。息が俺の顔に掛かるくらいに。俺はのけ反り気味になりながら、


「いい。俺はおまえを守るって、決めたから」


 そうキッパリと言った。



「あなたって、見かけによらず優しいのね?」


「“見かけによらず”っていうのは余計だろ?」


 俺がそう返すと、ねこは楽しそうに目を細めて笑った。

 その笑顔がめちゃくちゃ可愛く見えて、不覚にも俺はドキドキしてしまった。