アイドル拾っちゃいました

 宏美は熱っぽい目でそう言った。


「そ、そうだよな?」


 俺はそう言いつつも、ドキドキして行動に移れなかった。


「こんな格好してる私じゃ、その気にならない?」


「いや、そんな事は……」


 実はそんな事はあった。“その気にならない”というのとは違うが、国民的アイドルのヒロミンに気安く触るのはおそれ多いというか、そう、いわゆる気おくれしてる部分が俺にはあった。


「私は私よ?」


 宏美の目が、たちまち涙で潤みだした。俺はそれを見て、思わず宏美を抱き寄せた。


「ごめん。なんか俺、ドキドキしちゃって……」


「バカ。早く慣れてよ?」


 俺は宏美の髪を撫でながら、口紅で真っ赤な唇に口付けた。その感触は、間違いなく宏美の唇だった。


 長い口付けの後、「宏美?」と呼ぶと、宏美はトロンとした目で「なあに?」と言った。


「やっと宏美とヒロミンが俺の中で完全に重なったよ」


「そう?」


「もう我慢出来ないんだけど、いいかな?」


「え、ちょ、ちょっと……!」


(おしまい)




 最後までのお付き合い、ありがとうございました。

2012.7.23 秋風月