通りに出た所にタクシーが数台停まっており、先頭のタクシーの窓をコンコンと叩くとドアが開いたので、宏美をその中に入れ、続いて俺も中に体をすべり込ませた。


「運転手さん、早くドアを閉めて、走ってください!」


 びっくりした顔でこっちを見ていたタクシーの運転手さんにそう叫ぶと、「は、はい」と運転手さんは返事をし、ドアがバタンと閉まってすぐに走り始めた。


 遠くなって行く出待ちの人達を後ろに見て、俺はホッと安堵の息を漏らした。


「お、お客さん、どこへ行きましょうか?」


 運転手さんにそう聞かれ、


「そうですね……、なるべく近い所で、人のいない静かな所へ行ってもらえますか?」


 そう答えて宏美を見ると、彼女はコクッと頷いた。


「では、ホテルへ行きますか?」


「ほ、ホテル!? いやいや、公園みたいな所はないですかね?」


 苦笑いをしながら宏美を見たら、彼女はクスクスと笑っていた。


「公園ですか? それならいい所がありますよ。私に任せてもらっていいですか?」


「はい、お任せします」