アイドル拾っちゃいました

　俺のは宏美を想っての溜め息だが、ヤコちゃんのは何のためだろう。そう思っていたら、


「羨ましいなあ……」


　と彼女は呟いた。いったい何が羨ましいのだろうか。


「今のお二人は気の毒だけど、私……ヒロミンが羨ましい」


　宏美が羨ましい？ どういう事だろう。不思議に思ってヤコちゃんを見入ったら、彼女は恥ずかしそうに目を伏せた。


「私も、恋をしたいなあ……」


　ヤコちゃんは目を伏せたままそう呟いた。ああ、そういう事か……


「好きな人はいないの？」


　そう聞いたら、ヤコちゃんは小さく首を横に振った。


「ヤコちゃんにはファンがいっぱいいるでしょ？ 変な話、選り取り見取りなんじゃ……」


　咄嗟に川島の事を思った。このタイミングであいつの事をヤコちゃんに紹介したらどうだろう……

　そう思ったのだが、


「ファンの方は有り難いけど、それと恋とは別だから……」


　そう言われてしまい、川島の事を言うのはやめた。