軟禁生活が始まって数日後のある深夜、そのヤコちゃんが俺の部屋にやって来た。思わず彼女の後ろを見たが、彼女の他には誰もいなかった。


「ごめんなさい。私だけなの。入っていいですか?」


 ヤコちゃんはすまなそうな顔をし、かつ周りを気にするようにそう言った。すまなそうにしたのは、俺が宏美が来たのかと期待した事に対してであり、周囲を気にするのは、俺に会うところを事務所の人間に見られたらまずいからだろう。


「ああ、もちろんいいよ」


「おじゃましまーす」と言って入って来たヤコちゃんは、ちょっと緊張した様子だ。夜中に男の部屋に一人で来たのだから当然だろうけども。


「今まで仕事だったのかい?」


 ヤコちゃんは化粧をしてるし、ジーンズにTシャツというラフな格好ではあるが、外から帰ってすぐという感じがした。


「はい」


 やはりそうか。こんな夜中まで、大変だなぁ。