アイドル拾っちゃいました

 俺は運転手から借りたサングラスを掛け、無言で歩いた。五十嵐京子は何か言うかと思ったが同じく無言。


 質問を投げた人が気の毒になってしまった。今までの人生で、人から話し掛けられて無視した事は一度もなかったと思う。ましてや気に入らない相手でもないのに。


 俺にはこういうのは無理だなと思った。もっとも、こんな経験はこれが最初で最後だろうけども。



 エレベーターで2階に上がると、そこにプロダクションの事務所があった。


 五十嵐京子に続いて中に入ると、スタッフらしき若者が3人ほどいて、『おはようございます』とか『ご苦労様です』とか言いながら五十嵐京子に頭を下げつつ、胡散臭そうな目を俺に向けてきた。

 さしずめ俺は、“招かれざる客”といったところか。

 宏美がそこにいるかと期待したが、いなかった……