「え?」


 宏美はいない? だったら、どこへ……?


「やばい。連中に見つかりました。さ、早く行きましょう!」


 そう言うなり、男二人は俺を引きずるようにして後ろへ進んだ。確かに、階段の下にいた連中は、「いたぞー!」とか叫びながらこっちに向かって走って来ていた。


「お、おい、どこに行くんだよ?」


「車の中です。連中はあなたを張ってたんです!」


「お、俺を?」


「そうです。捕まったら面倒になります。早く、急いで!」


 何だかよく分からないが、押し寄せる連中に捕まるのは確かにヤバい気がする。しかし宏美は?


「宏美はどこへ行った?」


「事務所です。あなたもそこへ連れて行きます」


「それを早く言えってんだよ!」


 事務所だかなんだか知らないが、宏美がいる所ならどこへでも行きたい。俺は自分の足で走り、男の一人が開けたドアから、白い高級車に飛び乗った。