アパートが見える所まで行くと、階段の下に大勢の人間が集まっていた。おそらくマスコミの人間とやじ馬だろう。二階に上がり、窓から部屋の中を覗こうとしている奴もいる。


 おそらく宏美は部屋の中で一人、心細い思いをしていることだろう。


 今行くからな!


 そう心の中で叫び、連中に向かって駆けだそうとしたら、両方の腕を誰かにガシッと掴まれてしまった。


「な、何を……」


 Tシャツを着た二人の若い男が、両側から俺を挟むようにして俺の腕を掴んでいた。こいつらもマスコミの人間だろうか……


「神谷暁さんですよね?」


 片方の男がそう言った。


「ああ、そうさ。放せよ!」


「いいえ、放しません。一緒に来てもらいます」


「バカ言うな! 俺は宏美のところに行くんだ!」


「ヒロミンは、もういませんよ」