タクシーは道路が渋滞するとかえって遅くなるから電車に乗った。通常と逆方向のため車内はガラガラで、悠々とシートに座る事が出来た。


 すぐに写真週刊誌の問題のページを開いたが、気が高ぶっていて記事は頭に入らない。どうせある事ない事、憶測だけのくだらない内容だろう。


 写真を見ると、宏美はスッピンで帽子を被り、サングラスを掛けてはいるが、ファンが見ればヒロミンである事は一目瞭然だと思う。

 ってことは、それで見つからないと言っていた宏美は、ずいぶん楽観的だったという事だ。今更気付いても遅いが。


 俺の写真は目を黒く塗り潰してはいるが、俺をよく知る人間、例えば親戚や会社の同僚なんかが見れば、俺とわかりそうな気がする。


 電車を降り、駅を出た俺はアパートに向かって駆けだした。宏美が無事でいてくれる事を祈りながら。