翌朝、ハッとして目を開け、時計を見たら、いつもなら出掛ける時刻だった。携帯のアラームが鳴ったのは覚えていたが、それを止めて二度寝してしまったらしい。


 隣では、いつもは早起きの宏美がスヤスヤと寝息を立てている。昨夜はちょっと頑張り過ぎたからなぁ。


 思い出してニヤケそうになったが、今はそれどころではない。のんびりしてたら会社に遅刻だ。


 大急ぎで着替えを済ますと、ようやく宏美も目を覚ました。


「あ、寝坊? ごめんなさい!」


「寝てていいから」


 慌てて起き上がろうとした宏美に俺はそう言い、


「行ってくるよ」


 と言って宏美のおでこにチュッとキスを落とした。


「行ってらっしゃい」


 可愛く手を振る宏美に、いつも以上に後ろ髪を引かれる感じがしたが、それを振り切るように「じゃ」と言い、俺はアパートを飛び出した。