「お帰りなさい」


 背中から女の声がした。その声は、聞き間違えるわけもなく、振り向くと、ねこが立っていた。


「ねこ!」


「きゃっ」


 思わず俺は、ねこを思い切り強く抱き締めていた。


「ど、どうしたの?」


「おまえがいなくなったと思ったんだ」


「私が? あなたに黙っていなくなるわけないじゃない」


「そうだよな。どこへ行ってたんだよ?」


「買い物よ。荷物が落ちちゃうから、放してくれる?」


「あ、ごめん」


 ねこから離れて彼女を見ると、例の変な帽子にサングラスを掛け、重たそうな買い物袋を両手に提げていた。