急いだおかげで、アパートに帰り着いたのはまだ日が完全に落ち切る前の夕暮れ時だった。こんな早くに帰って来たのは、就職してから初めてではないだろうか。


 などと感慨にふけってる場合ではなかった。なぜなら、俺の部屋に明かりが灯っていないから。俺が恐れた通り、ねこは出て行ってしまったのだろうか?


 震える指で鍵を開け、薄暗い玄関の明かりを点けて真っ先に下を見たが、そこにねこのスニーカーは……ない。やはりねこは出て行ってしまったらしい。


 俺はがっくりと肩を落とし、壁に手を着いた。そうでもしないと、倒れちまいそうだから。

 俺の中で、こんなにもねこの存在が大きくなってるなんて思わなかった。もうねこに会えないと思ったら、悲しくて涙が出そうだ。


 いや、実際のところ涙が出て来た。とその時、