珈琲の香り

午後はゼミがないという桜と別れて研究室の扉を開いた。


「やっぱり桜ちゃんは可愛いな~」

「今日のワンピース、似合ってたなー。ピンクだよ!ピンク!!」

「可愛いよな~」


…開けた途端、これですか?!

研究室には同じゼミの男どもがいて、私の顔をため息交じりに見てくる。

まあ、いつもの事なんだけど…


「双子なのに…樹は残念な子だよね~」

「ほんとっ。桜ちゃんにすべての遺伝子が行っちゃたって感じ?」


は~…

どうせ私は女らしくないですよ。

桜みたいにピンクのシフォンワンピも着こなせないし、フワフワな髪の毛じゃないし、美人じゃないし…

どうせね、いつもジーンズにシャツで、女らしさのかけらもないですよ。

一応シフォンワンピや女の子服は持ってるけど、学校来るのにそんなおしゃれしてられないじゃん!!

どうせ研究室にいると汚れちゃうし…


いつもの事とはいっても、やっぱり腹が立つ!


「うっさい!残念な子って言うな!!」

「…そうだぞ。樹は樹で可愛いじゃないか」

「――!」


声の主は新堂くんだった。

現在進行形で片思い中…

そんな新堂くんが私を「可愛い」って。

…やばい!顔が火照ってくる…


「おー、樹が赤くなってるぞ!」

「…バカ!!」


小学生じゃないんだから…