珈琲の香り

とにかく帰って、どうすればいいのか考えた。

もちろん風花のことも……

何て話せばいいか……

風花を忘れることができない俺が、お前を幸せにできるのか……

一晩中仏壇の前で考えてたよ。


それでも答えはでなくて……


そんな俺に決断させたんだよ。

お前に渡したあの靴と、蒼が……


夜遅くに蒼が来たんだ。

『桜から電話があって』って。


蒼に責められたよ。

何であんな風にしか言えないんだって。

好きなら好きでいいじゃないかって……


風花のことを知っても諦めなかった樹の気持ちはそんなに軽いものじゃないってな。


その時かな?

風花に渡そうと思った靴が目に入ったのは……


『同じくらいのサイズだな』


そんなことを思ったら、なんだか考え込んで、お前への気持ちを蓋しようとしてた俺の気持ちがバカらしくなっちゃって。


風花への気持ちとお前への気持ち。

俺は同じだと思ってたんだ。

だけど違う。

もう二度と手に入らない者への気持ちと、手を伸ばせばつかめる者への気持ち。


これは別なんだって。

忘れることなんてできない。

それでも、靴が歩くためにあるように、俺も前へ歩かなきゃいけない。

風花の靴が俺に教えてくれたんだ。