珈琲の香り

蒼と別れたあと、店に出てこなかったときは、本当に心配したんだ。

何かあったのか?

具合でも悪いのか?

…………店、辞めるつもりなのか?



蒼に聞いても何も話してくれないし、携帯は繋がらないし。

こんなことなら、桜の番号聞いとけばよかった……



あ………何で家を知ってたかって?

それは、お前がバイト始めるときに履歴書、持ってきただろ?

そこに住所が書いてあったから。


でもな、お前の家に行くまで、かなり悩んだんだよ。

こんなに悩んだことはなかったよ。

インターフォン押すのだって、かなりの勇気がいるんだぞ。

特に……気になる女の家のはな……


それなのに!!

桜は俺とお前二人きりにして出掛けちゃうしだ。

ホント、どうしていいかわからなかったよ。

しかも、お前は『好きだ』とか突然言い出すし。

気持ちは嬉しかったよ。

俺も好きだったし……

だけどあの状況で、あのタイミングで。

風花のことも話してないのに、それでもいいって……


俺、店までどうやって帰ったか覚えてないよ。