珈琲の香り

そういえば、俺はまだお前に謝ってなかったな。

「お嬢ちゃん」って言ったこと。

ずっと気にしてたもんな。

背が低くて、童顔だって。

いくつになっても子供に見られるって。

蒼が来なければ、あのまま『お嬢ちゃん』のままだったかもしれない。

……しかし驚いたよ。

蒼の同級生。

しかも同じクラスだって言われて。

再会できただけでも奇跡なのに、蒼の一言でここでバイトすることになって。

『あー、毎日会えるな~』って、嬉しかったよ。

色を知った俺は、また白と黒の世界に戻りたくなくて……

だけど、お前は蒼が好きで、俺なんて『良きお兄さん』って感じだったな。

でも、それでもよかったんだ。

毎日会えること。

白と黒の世界に戻らなくて済むこと。

お前が笑っていること。


そばにいて、その姿を見れるだけでいい……

そう思ってた。

そう思っていたのに、蒼の話を聞かされる度、『何で俺じゃないんだ?』って……

そんなことを思ったり……


もちろん、蒼には幸せになってほしかった。

お前を見つめる蒼の目は本当に幸せそうで、その蒼の目を見つめかえすお前も幸せそうで。

悩みとも、愚痴とも違う、のろけ話を毎日聞かされたな。