珈琲の香り

あの日。


「―……いらっしゃい……」

髪の色こそ違うけど、お前に似た小さな女の子が入ってきた。

やっぱり奇跡なんてないか……

そう思った。

だけど、もう一度奇跡が起こった。

後ろからお前が色を伴って入ってきたんだ。


また会えたことが嬉しかった。

今思えば、あの時お前に惚れたんだと思う。

一目惚れってやつ……

風花しか知らない俺の、2度目の恋。

注文はアメリカン。

コーヒーを淹れる俺をじっと見ていたっけ………


何食わぬ顔で豆を挽いていたけど、心臓がドキドキして、手が震えてて……

30過ぎて、こんなに緊張してコーヒー淹れることなんてないと思うほど、緊張した。





あの時、桜のホットミルクに描いた絵、覚えてるか?

お前は『似てない双子』ってよく言うよな。

でもな、俺から見ればお前らはそっくりだよ。

顔も、声も、仕草も……

だから、あの時双子の絵を描いたんだ。

ホットミルクに絵を描くなんて、あの時が最初で最後だったけど……

桜の喜んだ顔も、その桜を見つめるお前の顔も、今でもはっきりと覚えてるよ。