珈琲の香り

なんだか、切ないよね……


ずっと取っておいたなんて……

もう何年も経つのに。

それだけ愛してたってことだもんね。

私の入る隙なんて、きっとない。


どんなにおしゃれをしようと、どんなに涼さんを好きになろうと……

涼さんの心の中にはきっと、風花さんがいて、今でも愛してるんだよね。



「おいっ!履いたら仕事しろっ!」


気付けば店内にはお客さんがいて、涼さんがモーニングの準備をしてる。


「…………風花さん。ごめんなさい。せっかくの靴ですが、お借りします。」


ヒールの低いその靴は、思ったよりも足にしっくりと馴染み、歩きやすかった。


「涼さん……」

「やっと来たか。靴履くのにどれだけ時間がかかるんだよ!……これ、持ってけ。」


いつもと変わらない涼さんの声が、胸を締め付ける。

まだ愛してるんでしょ?

そう聞いてしまいそうになる。

聞いて、『そうだ』といわれるのが怖い。

涼さん……あなたを愛していいですか?

風花さんが心の中にいて、私なんて相手にされないことくらいわかってます。

それでも、あなたを愛していいですか?


でも、きっとそう言ってしまえば、涼さんを苦しめるだけ……