珈琲の香り

……なんて、反論する余地もなく………


私は桜にされるまま、じっとしているしかなかった。




「―……よしっ!これでいい!いっちゃん、きれいだよ。」


何をどうされているのかわからない。

どんな魔法を使ったのかもわからない。

でも、鏡の中の自分の顔は、あの成人式の時のようなおかめではなく、


「誰………?これ………」

「いっちゃん!やっぱり私たち、双子だね~」


化粧をされた私の顔は、ほんの少しだけ桜に似ていた。

似ているのは体型だけ。

顔も性格も全くの正反対だと思っていた。

でも、こうやって化粧をされた私は、少しだけ桜に似ていて、嬉しくなる。

………桜みたいにふんわりとした『女の子』じゃないけどね。

それでも、どことなく似ているのが嬉しい。


「さあっ!いっちゃん!!自信をもって涼さんに会いに行ってきなさいっ!……私は寝ます……」


そういうと、桜はさっさとベッドに潜り込み、寝息をたて始めた。


時計はそろそろ出ないと間に合わない時間を指している。

「桜。ありがと……」


寝ている桜を起こさないようにそっと部屋を出ると、やっぱり玄関に用意された桜の靴を履いて歩き出した。