珈琲の香り

「そろそろ始めるぞー。…ん?樹は具合でも悪いのか?」

「ぐ、具合なんて悪くありません!」


あはは~なんて、研究室は笑い声で満ちてるけど…

新堂くんの顔が見られない!

だって「可愛い」なんて言われると思わなかったから…

教授の声も耳に入らないくらいドキドキしてる。

いやー!どうしよう!!

新堂くんがだよ!?

身長178センチ、二重のパッチリおめめの超イケメン。

大学のイケメンコンテストで2年連続1位!!

しかも、有名企業の御曹司!

王子様を地で行っちゃう新堂くんが、こんなチビでお世辞にも可愛いとは言えない私を「可愛い」って!!

ああ、神様…

これは夢なのでしょうか?

こんな寝オチ、絶対に嫌です!

もし夢なら覚めないで~


「…樹。現実に戻ってこい!」


後ろには腕組みした教授の、この世とは思えないほど恐ろしい顔があった。


「すすすすいません…」


は~…怒られちゃった…

新堂くんも笑ってるよね…

そっと新堂くんの顔を窺うと

『平気?』

って小さく口が動いてて…

やっぱりこれは夢なんじゃないかな?って思っちゃった…