「また、急いで来たんだろ。
そんなに急がなくても、僕は逃げないよ?」

僕は奈菜の反応を見るようにイタズラに笑う。

奈菜はそれに小さくコクンと頷いて

「分かってるけど…でも……」

言葉を濁すように語尾を弱めた。

「でも…なに?」


僕はその語末に続くであろう言葉を知っているが、敢えて尋ねる。


奈菜の声でその理由を聴きたいから……


「早く先生に会いたかったんだもん」

奈菜は恥ずかしそうにボソッと言うと、耳をピンクに染めた。



…やっぱり……言動まで僕の思った通り。



それでも、僕はそれを目の当たりにすれば


その一瞬の奈菜が

愛おしくて

可愛くてたまらない。



だから、思わず回している腕にも力がこもる。


しかし、一つだけ……