私は、さっき買ったばかりのメープルティーのお徳用パックを抱えて、ドアの前に立ってた。
「あれ?」
鳴らない。また線、抜けてるのかな。
コトッ
「ミューズさん?」
何か音が聞こえたから、中にはいるみたい。私はそっと扉を開ける。
「失礼します・・・」
言葉の代わりに返ってきたのは、紅いセーターの背中。そのままピアノの音色が流れはじめる。最初の一音だけで分かる。何度も聴いたことがある曲。私の思い出の曲。でも違う・・・。私の知ってる背中じゃない。
「やだ・・・」
今日は、聴きたくない。
「あれ?ねみちゃん?」

