春。桜の季節。はじまりの時。明るくて華やかで。きっと、こころの中でいっぱいに喜びがあって。

「きれいね。ほんとに」

となりにいる、あなたもそうね。入学式。私たちは桜並木がずっと続く、大学の門をくぐる。

「どうか、変われますように」

せっかく、気持ちを整理できる、いや、しなくちゃいけない瞬間だもの。私は願いを込めて、空を見上げる。

 桜田音美。私の名前。そう。春は、私の季節。なのかな。

「ネミ、ちょっと笑えるようになったね。よかったぁ」

「はる、ありがと」

彼女にとっても特別。大学受験を通して知り合った、大切な友人。はる菜。ふわっとした、妖精みたいな女の子。