「うん。ちょっとだけ、よーこに近付けた気がした」

そっと楽譜を閉じ、タオルを手に取った。かわいらしい猫ちゃんの柄。

「いつもこうやって、ピアノや他の楽器たちをきれいにしてあげるんだ」

ミューズさんのおそうじの時間。

「よーこもいつの間にか手伝ってくれるようになって」

ふたりの姿が目に浮かぶ。

「それでやっと、オレはよーこのピアノが聴けた」

私も聴いてみたいな。

「もうこんな時間」

「あ、ごめん、大丈夫?」

「はい。電車、いっぱいあるから」

「そう?」

ケータイを灯した時。