大学2回生の夏休み。こつこつと音楽療法の勉強を重ね、トップクラスの成績だったミューズさんは、学長先生に呼ばれた。半期ごとに、優秀な学生を表彰する制度が設けられているために。

「その時、副賞としていただいたのが、この研究室。すぐにオレは、呼びこみを始めた」

音楽療法も広くは知られておらず、2回生ということもあって、なかなかクライエントは見つからない。

「まぁ、夏休みにわざわざ大学に来てもらおうとしたオレも悪いんだけどね」

「あっ、ほんとだ」

「だけどね、いたんだよ、不思議な子が」

空っぽのコーヒーを置いた先に広がってる。

「よーこは、毎日泣いてた。あの木の下で」

桜・・・。優しい風が、私と葉子さんを包んでくれた。

「とっても気になったし、すごく心配したよ」

みゅーは、自分でクライエントを見つけるの・・・。葉子さんの言葉を思い出す。