どうしてだろう。あの曲が、私の中からあふれてくる。



アンダンテ・マエストーソ「さらばピアノよ」・・・。ベートーヴェン最後の楽想と見られる曲。私の大切な曲。ふたりの孝太が届けてくれた曲。

「ずっと・・・逃げてた。すきだったから。孝太のこと」

「うん」

「弾いたら思い出してしまいそうで怖かった」

「ねみ・・・」

でも・・・このピアノは私を許してくれた。

「ありがとう・・・」

私は、ここでちゃんと生きてくから。

「孝太。ありがと」

あなたの分まで、歩いていくね。