春の香りがする。居心地のいいベンチ。かわいいお花たちが歌う、小さなお庭。美しい桜の木。ここは、私の場所。安らげる空間。・・・でも、すべて与えられたもの。私の意志とは関係なく。2回生。新しい時間を迎えたのに、この手紙が私を引き止めてる。あなたが、私から離れたこと。彼の名前を孝太が知っていたこと。そして・・・あなたが、好きになった人。私は、知ってる・・・。悩んでる。だから、どうしても、私は。あなたにとっての、過去の人になれないんだ。

「ねみ、おはよう」

「・・・あ、孝太」

わぁ、スーツだ。

「何々、また考えごと?」

「うん」

「しょうがないなぁ。ごめんね、バタバタしてて。先輩に挨拶廻りとか忙しくてさ」

「そうだよね」

「まぁ、これでも一応、大学院生。新しいスタートだからね」

分かってる。私も、いつまでもこうしてはいられない。