誰とも目を合わせることなく、窓際の前から四番目の席に近付く。
 そこが僕の席だ。もうこんなの慣れっこだ。机に黒いペンで書かれた卑猥な文字も、僕をどん底に突き落とす文字も。

 椅子に何もない事を慎重に確認して、僕は椅子に腰かけようとした。
 しかし確かめたはずの椅子に座った途端、椅子が右に偏りバランスを崩し、僕は勢いよく床に倒れ込んだ。


「あはははっ!」
「マジうけるっ」
「ちょーキモいしっ!」

 倒れ込んだままの僕の周りに、いつの間にか人だかりが出来ていた。

 泣く、もんか。

「帰れよ糞!」
「お願いだから早く死んで」

 まるで汚い物に触るかのように僕の身体は何人もの足に蹴られ、しまいには唾をかけられた。

 早く――シロに……会いたい。

 何が原因なのかはわからない。でも、昔からそうだった。

 キモい。ばい菌。死ね。


 抵抗すればするだけ行為はエスカレートする一方。
 逃げ出したかった。でもそんなこと出来る勇気など、僕は持ち合わせてなかった。