確か、あれはまだ小学生になったばかりの頃。

 僕は公園を歩いていた。今のシロを拾ったあの公園だ。
 すると入り口付近に、汚れた段ボールに入れられミーミーとか細い声で鳴いている白く小さな子猫を見つけた。まさにマンガなんかでよく見かけるあの光景だ。

 マンガの主人公がそうしたように、例外ではなく僕もその段ボールに近寄った。まだ産まれて間もないのか、それは驚く程小さくて、今のシロなんかよりずっとずっと小さくて“僕が守ってやらなきゃ”そう思った。


 家に連れて帰ると案の定、母親に叱咤された。僕がいくら頼んでも、「早く捨ててきなさい!」の一点張りで、まるで汚らしい物を見るような目付きで僕の腕の中で小さく疼くまっている子猫を睨み付けた。
 僕はうなだれながら、その子猫を公園に戻しに向かった。

「ごめんね」
 子猫を段ボールに戻し、泣きながら何度も何度も謝った。
 その小さな子猫は、何を言われているのか全くわかっていないのであろう、キョトンとした表情でこちらを見ている。その表情がなんとも愛おしくて、胸が締め付けられた。