「シロっ! 今日はケーキ買ってきてやるからな!」

 朝、部屋を出る直前、シロにそう声をかけた。シロはピクッと反応して、こちらに顔を向ける。その表情がなんともいえず可愛らしい。

 今日は僕の誕生日だ。帰ってきたらシロと一緒にお祝いしよう。勝手に、そう決めていた。
 階段を降り、耳を澄ませながらリビングに向かう。何も物音が聞こえない事を確認して、静かに扉を開けた。

“ユウちゃんへ
今日、明日九州に出張です。
お金を置いておくので、夜ご飯はいつものところで出前を取りなさい。
学校と塾にはきちんと行くように。
ちゃんとユウちゃんが行ったか、いつものようにママの方から先生に確認の電話を入れます。”

 テーブルの上にこんなメモ書きがあり、そこに焼かれた食パンと一万円札が一枚置かれていた。
 うざったい。僕は顔をしかめて、その紙をビリビリに破りゴミ箱に投げ捨てた。

 お皿に載せられた食パンを手に取って部屋まで戻り、「シロ? 御飯、置いておくから」と声をかけ、入口にお盆を置き、部屋の鍵をきっちり閉めた。