好天の下で、緩やかで優しい時間が流れていた『久遠の花』の隠れ里。

 そこへ突然、数多の兵士が現れて襲ってきた。

 北方の人間と思しき白い肌の、金や銀の髪をした兵士たち。
 彼らは怒り狂う獣のような形相で、『守り葉』たちを斬り殺し、『久遠の花』を生け捕ろうとしていた。

 里を守るために『守り葉』は毒を駆使して奮戦していたが、何故か兵士たちは毒を受けても平気だった。

 何故? どうして?
 困惑しながら、いずみは隣にいたみなもの手を引いて逃げ出す。

 追手が来ないかと後ろを振り返った時に見たのは――。
 ――子供たちの元へ行かせまいとして立ちはだかった両親が、血飛沫を上げ、その場に崩れ落ちる姿だった。

 本当は駆け寄りたかった。
 けれど心とは裏腹に、いずみの足は森を向き、隠れ里から離れて行った。


 背後から、泣き叫ぶ声や悲鳴、兵士たちの怒号が聞こえてくる。

 命が呆気なく消えていく気配。
 ある者は殺され、ある者は自害する、死の気配。

 もう一度振り返って、その光景を見る勇気はなかった。

 いずみは吐き気にも似た慟哭を胸に、森へ逃げ込んだ。
 そして今に至る。