桃色の蜘蛛、只一つの罪【短篇】

二十歳を前にして、一人の男に救われ、感じた安堵。

同じ安堵を夕日が見せてくれる中、出頭する事を決めた。



親は別段何とも思わないだろう。
寧ろ胸を撫で下ろすに違いない。

─年少から出たら風景も違って見えるかな…優しいままの風景を素直に見れるかな…。

少なくとも、朝の不安は解消されるかもわからない。

目の前のコンビニの看板が、いつもの夕日に照らされ、オレンジ色に光っていた。

もしかしたら、彼は何気なく“人間らしさ”を教えてくれた小さな蜘蛛。

荒む私に一本の糸を垂らしてくれたのかも知れない。

私はその糸を掴む……。

─あの安堵の中に包まれたら行こう。決意表明に募集でもしようかな……。


胸の中で冗談めかしながら、コンビニのドアを開いた……。



【完】