桃色の蜘蛛、只一つの罪【短篇】

あれからも、日々目に映る街の動き。

少し優しく見える人の営み。

前にも増して感じる、朝の不安。夕方の安堵。

明け方の不安は罪を感じてからはより大きく、夕方の安堵はどことなし、あの時の感覚に似ていた。

たった一つの優しさが、こうも暖かなものだったなんて、今まで知らずにいた。

引き替えに、胸に留まって消えないモヤは晴らし方すらわからずにいた。

自分に疑いつつも、私自身さえも捕えてしまった蜘蛛の糸。

桃色の蜘蛛から逃れればいいのか、それすら果たして出来るのか、わからない程に絡まる糸。