桃色の蜘蛛、只一つの罪【短篇】


─うん…、あ…夜ね…

─何?

白い心を出してはいけない…。
裏目に出ると辛いだけだ。

─いや、何でもないよ。


彼はあれからどうしたのだろう。

警察が助けに来なくても、多分大丈夫な感じだったのだけど。

─お礼も言えなかったな…。

顔もはっきり見えないままに、夢中で逃げた事に少し後悔すら感じた。

今までに味わった事のない、穏やかな気持ちと、“安心感”を感じていた。

そして何より、どんな黒い事をしても感じなかった、罪悪感を感じていた。

多分何事もなく家路に付いたであろう彼だけど、私はただ助けられて放って逃げた。

最低で最悪な大きな罪を一つ犯したような気になっていた。