「なに、何か用ですか?」


体がダルいうえに、面倒くさい事に巻き込まれたくない。

その人は少し躊躇した様だったが、再び俺の前に回り込んできた。


「あの…私、2年の水嶋雨音って言います。

その、あなたの後ろに……」


俺の後ろに何なんだよ。

俺は後ろを振り返ったが、当たり前だが何もない。


「後ろに何だよ?」


面倒くさい事を全面に出している俺に、やはり気を使って居るのか、言い辛そうにモジモジしている。


本当に……だから女は面倒くさいんだよ!


「じゃあ、もう良いだろ」


そう言いながらその人の横を通り過ぎる瞬間、ボソッと出た言葉。


「あの…後ろに……女の人が……」


その言葉を聞いた瞬間、俺は立ち止まった。

思い当たる節が有りすぎて、前に歩く事が出来なかったのだ。


この人は奴が見えるのか?


それとも、ただからかわれて居るのだろうか?


まさかな。
俺にそんな事をした事で、何の特にもならない。
俺は前に歩き出す事が出来ず、ただその場に立ちすくんでしまった。

周りを歩く生徒は、そんな状況を不思議そうな顔で俺達を見ている。

その人は、不信感満載の俺に、トドメの一言を話し始めた。