【母は何か知ってる】


俺はそう直感したのだが、いかんせん聞くのが怖かった。

その事を聞いた事で、自分が自分で居られなくなってしまいそうで……


そして、アザを見た時の母のあの顔。


なんだかんだ、俺もまだ小学生。

全てを受け入れれる自信は無かったのだ。

洗面所に置いていかれた俺は、言い様の無い不安と戦いながら、お腹がすいたと言う人間的生理現象に勝てないで居た。


変なの。


そう冷静に思った後、美味しそうな匂いが漂う居間に吸い寄せられる様に向かった。

お腹が空いたのと眠いのには、どうやら勝てないらしい。


さっきまで気になっていたアザの事を嘘みたいに忘れ、頭の中は昼ごはんのメニューでいっぱいになっていた。


こうやって、ずっと忘れて居たかった。


いや、忘れて居たのに……


なぜ、俺だけこんな思いをしなきゃならないんだ。


何故なんだよ?


忘れていた記憶と共に、蘇る昔の苦しみが否応なしに襲いかかって来ることとなるとは……