テレビを見ようと居間に行こうとした時だった。
不意に母に呼び止められ、洗面所に手招きされた。


「なぁに?」


得意な天使の笑顔で聞くが、母は思いのほか真顔のままで、何だか不安になる。


「一輝、ちょっとごめんね」


そう言うと、さっき着直したばかりの服をグイッと脱がせた。


「なっ……!!なにするの?!」


いきなりの不可解な行為に、抵抗する暇も無くただされるがまま脱がされてしまう。

肩甲骨にあるアザを見た母は、目を見開き息をのんだ。


「これは……あの、ぶつけたんだ」


「ああ……」


俺の声など全く耳に入っていないのか、そんな嘆きとも取れるため息をつきながら優しくアザを触ってきた。


「どうしたの?」


「蓮の花」


二人の声が重なった。


蓮の花?!


そうだ、この形は蓮の花だったんだ!!

それより、なぜ母はそれを……


暫く何か考えて居た母は

「ごめんね」


そう言うと、いつもの優しい顔に戻っていた。

俺に服を着せてくれると

「お腹すいたよね?」

そう言いながら、ご飯の支度をしに台所へと向かって行った。