「やべっ、俺もう帰らなきゃ」
遊び疲れて公園のベンチでジュースを飲んでいた悠斗が、時計を見た瞬間に発した言葉。
「悪い、先に帰るわ」
そう言うのと同時に、自転車に跨っていた悠斗はあり得ない速さで去って行った。
俺と真由美ちゃんは、そんな悠斗の後ろ姿を見ながらクスクスと笑い合っていた。
「早いよね~~悠斗」
真由美ちゃんが俺を見る。
クリクリした瞳に一瞬吸い込まれそうになりながら、あくまでも冷静に答えていた。
「本当にな」
視線が絡み合った俺らから、笑い声が消えていたんだ。
無言が続く。
「……かずくん…嬉しかったよ」
真由美ちゃんは静かにそう言うと、横に座っていた俺を上目遣いで見ながら頬を赤く染めている。
男ならこんな可愛い姿を見たら、誰だって愛おしく感じるだろう。
「真由美ちゃん……」
俺は真由美の手を取ると、優しく額にキスをしたんだ。
唇を離すと、さっきより真っ赤になった真由美ちゃんが、大きな瞳をさらに大きくさせて驚いていた。
「……好きで…す」
そんな真由美ちゃんは、か細い声で俺に2回目の告白をしたのだ。
俺は真由美ちゃんの肩を抱き寄せて、ゆっくり頷いた。
嬉しそうな笑顔を向けた真由美ちゃんは、俺の肩に頭を預ける。
幸せな時間だった。
夕日がゆっくり沈んでいく様子を、2人で眺めていたんだ。

