───茉莉果お嬢様は雨を忌み嫌っている。 何がそんなに嫌なのかを問いただした事はないが、彼女の祖母が亡くなったのが激しく降りつける雨の日だった。 法要が行われる七日間、ずっと雨が降り続いた。 俺は彼女に仕えて日も浅く、故人がご健全だったころの様子は聞いた話でしか知らない。 『おばあ様は、私達の涙が見たくないから雨で隠してくれてるのよね』 そんなことを当時のお嬢様が呟いていたのを、よく覚えている。とても印象的だったからだ。