光一つない廊下の途中。

バルナはハタと立ち止まる。

「…どうしました…バルナ先生…?」

前を歩いていた小岩井が振り向く。

彼女は小岩井の問いかけには答える事なく。

「…あの子達ったら…」

小さく溜息混じりに呟いた。

バルナは音楽教師だ。

その聴力は常識の範疇を大きく超えている。

それこそ、こんな静まり返った校舎内ならば、針が床に落ちた音さえも聞き分ける事ができる。

万が一、現在校舎に『数名の生徒が居残っているとしたら』、その衣擦れの音さえも察知する事ができた。