言いたいコトを言うと、ケロっとしたものである。

正岡朱乃が人気パティシエである理由は、その技術と味、オリジナリティあふれるアイデアもさることながら、今この女性に向けている屈託の無い笑顔だ。

非公認のファンクラブもあるらしい。


「宿尾、紹介するわね。
私が修業した店の後輩で、友達の大江イクノちゃん」

イクノは宿尾と朱乃をチラチラと見て言った。

「正岡先輩の彼氏さん?」


その言葉が終わらない内に

「違いますっ!!」

「…即答、ですかい」

宿尾は残念そうに笑った。


「あ!
も、もしかして正岡先輩も参加するんですか?」

「ううん。
たまたま私は近くを通り掛かったから、見に来てみただけ。
イクノちゃんは出るの?」

「は、はい!
良かったぁ…
正岡先輩が出るんだったら、私に勝ち目が無いもの…
じゃ、先輩。
もし良かったら最後まで見ていってくださいね!」


イクノは宿尾と朱乃に一礼し、駆け寄って来た時と同じようにタッタッタッと駆けて行った。