22歳のあたしと彼は“友達”付き合いをして、はや4年。

二人で遊びに行く事も多いのに、恋にはなかなか進展しない。

いつもドキドキしているのは、あたしの方なの…?


今日は、大学生活最後の前日。

卒業前に彼と二人で、思い出のキャンパス内を歩いている。

「もう、お前と歩くのも明日が最後なんだな?」

「うん。四年間があっという間だったね」

そんな会話をしながら、彼が石垣に座った。

ここはひとけのないグラウンド。

年一回、大学祭の時にだけ使われる場所。

そこの石垣に座った彼は、あたしを笑顔で手招きする。

緊張しながらも、隣に座るあたし。

チラッと見上げた彼の顔が、思った以上に近くて、一気に緊張をした。

あたしは彼のくちびるがとても好きで、特に少し口角を上げる笑顔にキュンとする。

厚くもなく薄くもなく、形の整った艶のあるくちびる。

いつか触れてみたいな…。

なんて、あたしは何を考えているのよ。

澄み切った青空の下、爽やかな風があたしたちを包み込む。

「お前って、よく見るとマジで可愛いな?」

「えっ!?突然、何を言うのよ」

顔を覗き込まれ、あたしの心臓はバクバクだ。

少しでも動いたら、そのくちびるに触れそう…。

すると、あたしの最も好きな笑顔、口角を上げて彼は微笑んだ。

「お前のくちびる、いつもツヤツヤしててドキドキする」

「やだ…。冗談やめてよ」

「冗談じゃねえよ。オレ、そのくちびる好き」

ツヤツヤして見えるのは、毎日欠かさずグロスを塗っているから。

気付いてくれていたの…?

「あたしも…。そのくちびるが、ずっと好きだったの」

勇気を振り絞った告白に、彼は軽く指であたしのくちびるに触れた。

「予約。お前のくちびるにキスするのはオレな?」

「え…!?う、うん…」

照れ臭いけれど、ニヤけて頷いたのだった。

彼のくちびるに触れたい…。

その夢は、もうすぐ叶いそう。